2020年度は、大型豪華客船ダイアモンド・プリンセス号の横浜港入港から始まり、新型コロナウィルス感染拡大による国の緊急事態宣言へと広まった。学校も3月中旬から休校となり、卒業式や入学式も異例のまま5月末まで休校が続いた。
その間、学校からの課題(宿題)も徐々に増えて、オンライン授業が行われたりした。そんな中で、お子さんは“毎日が日曜日”状態となり、最初のうちは喜んでいた。が、次第に退屈してストレスから「親子げんか」も頻発する様になった。友達に会いたいと愚痴をこぼす子も出てきた。ところが、いよいよ学校が再開する6月になると、かったるいとか、行きたくないとか言い出す始末で、子供というものは全く身勝手な存在である。分散登校から始まり、短縮授業に移り、6月中旬からはようやく通常授業に戻りつつある。
それに応じて、学校の授業もグングン進むこととなった。科目によっては通年とはちがう単元から学習し始めた学校もあった。 中1・2生は、この夏に「練習量不足」を解消してほしい。学校は通常授業に戻っても、3ヶ月間の休校により「学習の遅れ」を取り戻そうと必死だ。当然、練習量が足りず、定着せずに終わる単元も大幅に出てくるはずだ。夏が過ぎたら、これまでに学習した単元内容をすっかり忘れてしまった…ということでは困る。多くの中学校では9月上旬に定期テストを実施すると思われるからだ。
そんな中で、高校受験を8ヶ月後に控えた中3生にとっては、4月に発表された入試日程は変わるのか、入試の出題範囲はどのようになるのか、カットされる単元によっては過去問の一部が使えなくなる。特に、英語などの総合力を見る科目では、関係代名詞がカットされただけで、英語の長文読解の過去問は全て解けなくなる可能性がある。来年度専用のつまり、出題範囲がカットされた予想問題で練習するしかないのが現状で、大変なプレッシャーだ。できる生徒は「そんなの関係ないよ」と言い切れるかもしれないが、中堅校を目指す生徒にとっては大きな問題だ。それでなくても、最近の神奈川県の高校入試問題は難化しており、平均点が100点満点中で約50点という科目が並んでいるのだから油断ができない。
夏休みが2週間に短縮されると、秋からの模試兼高校入試対策が十分にできなくなる可能性がある。なぜなら、理科や社会は、高校入試の実に6〜7割が中1・2年生で学習した内容から出題されているからだ。今現在、中3生のうちどれだけの生徒が中1・2年生で学習してきた理科・社会の単元を覚えているだろうか。塾では夏休みはそれを補強する学習に集中できるチャンスでもある。それは秋から始めては…。という者もいるが、秋から始まる模試では中1・2範囲からの出題が7割と多く、その結果に基づいて志望校を絞り込んでいくことになる。いくら英数国はまあまあでも、理社の出遅れは志望校の合格可能性の判定を低くする。合格判定結果が30〜50%と出た後でも、模試は模試で入試本番とは違う…と言い切れる受験生がどれだけいることだろう。上位校を受験する生徒は、特色検査問題対策も行なっていく必要があるのに…。
一方、さらに深刻なのは大学受験を控えた高校3年生だ。この3ヶ月間の休校は結構痛かった。コロコロと変わり続けた混迷の新しい入試制度のもと、浪人生と競合し、都心の大学の募集枠も減らされている「一般選抜入試」を諦めて、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)を選択する受験生が大幅に増えるものと予想される。となると、従来はその高校から多数進学していた大学でも、先輩たちよりも一ランク下の大学を目指さざるを得なくなる高3生も出てくるだろうことは想像に固くない。今は新型コロナウィルス感染防止のため、オープンキャンパスや学校説明会が中止されているが、オンラインによる大学の説明会を通して、最新の情報を早目に収集しておくことも大切だ。新しい入試制度になる元年のため、昨年度と比較して多くの変更点が予想されるからだ。もちろん、一般選抜入試を受験することを目指している高3生は、規則正しい生活を送ると共に、自己管理のもと学習時間を確保しつつ、この夏を制して秋につなげて欲しい。