一度のしくじりを責めることは親の罪

学習塾を営んでいるとあるのですが、今まで順調に推移しているお子さんが、一度でもしくじって悪い成績を取る教科があると、退塾を申し出る親御さんがいます。本人は、続けて通塾することを切に希望しているにも関わらずです。特に、高校受験期を迎える学年で見られるようです。進学できる高校がどこなのか、親同士の間でも話題になる時期に重なります。他のお子さんと比較して、自分のお子さんも同じようになってほしいとの願いから、そのお子さんの通っている塾に行かせようと決心することもあります。

 私たちは、お子さんが自習室に来て努力している姿をたびたび目撃しているので、お子さんを応援していました。お子さんの質問にもできるだけ答えて、学習がはかどるように見守っているのですが、親御さんにはその姿が見えない。反抗期のお子さんは、親の前では勉強の素振りを見せないケースもあるので余計です。1度のテストの結果で、お子さんの努力を「無駄」にしてしまうのは問題です。お子さんがテストでしくじったことを一番よく知っているところに、砂をすり込むようなものです。他の教科の成績を見ずに、たった一教科の成績だけで塾替えを考える先に何があるのでしょうか。もちろん、私どもは成績を上げるのが商売ですから仕方がない部分もありますが、上がり続ける成績などありません。上がったり下がったりしながら実力は付いてくるものです。次のステージに一直線で到達することはありません。必ず、学習が伸び悩む時期があります。その時期はお子さんごとに違いますが、その時期をどう過ごすのかがお子さんの学力上昇には大切なことなのです。

何より大切なのは、お子さんが勉強を通して「忍耐力」「人間力」「思考力」を磨き、蓄積してくれることです。学校で学んだ科目学習が、必ずしも、社会へ出て役だったか…というと、そうではありませんが、そこで培った力がものをいうのでだと私は信じています。もし、成績を上げるためだけに勉強するのであれば、100点を取ったお子さんはこれ以上勉強をしなくてもよいのでしょうか。たとえ50点でも努力した結果であれば、その努力をいたわるべきです。親が80点以上でないと褒めてくれない…となると、お子さんは、80点以上取らなければ親は自分のことを認めてくれないと勘違いして、追い詰められた努力をし始めます。その結果、本人によると、テストの形式や難易度(今回のクラス平均点は50点前後でした)が思ったものでないときに、焦ってしまい、なんとか8割は埋めないといけないと、急ぐあまり途中の式が「なおざり」になったようです。でも、他の教科では挽回したようです。これも、お子さんの成長だと思っています。人生には思い通りに進まないこともあります。さらなる人間力を養成して今後の活躍を祈る次第です。

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