「9歳の壁」という言葉をご存知でしょうか。塾業界ではある程度常識となっている話です。
小学校低学年の頃は、学校の授業も順調で、学校のテストでも満点を取っていたお子さんが、小学校高学年(たまに中学1年生)になると、伸び悩んでしまい、学校の授業が「分からない」と言い出します。
小学校では、1つの単元が終わるごとに「単元テスト」が実施されて理解度を見るのですが、次の単元に入ると、前の単元の定着度
を問われることなくどんどん先に進みます。これは、文章題や図形問題に限らず、分数・小数計算でも同様です。
それも一因かもしれませんが、一番の原因は小学校低学年時に「反射式計算プリント」を使った学習の洗礼を受けすぎたことでしょう.
「反射式プリント」とは、計算を速くする、いわゆる高速計算を強いるプリントを使った学習で、中には小学生なのに中学校の数学の計算まで進んでいるケースもありますが、彼らが理解しているのは、公式に当てはめれば答えが出る式の理解で、その単元の理解ではない場合が多いのですが、親御さんからすると、うちの子は勉強がよくできると勘違いされているケースもあります。
そのような高速計算ばかり追い求めていると、「考えながら解く」という大事な習慣が奪われてしまう可能性があります。
その結果、文章題だろうが図形問題だろうが、速く解くことが優先されるあまり、文章題でも「考えながら解く」というステップを忘れて、ただ目の前にある数字を加減乗除して答えらしきものを出して誤魔化してしまいます。
「速く解く」ということは「何も考えないで解く」ということとイコールでもあるからです。なぜなら、速く解くように強いられた脳は、考えることをやめるからです。
そうやって学校の勉強とは速く解くことだと誤解されてお子さんの脳は、暗記力と計算力だけで点数が取れていた低学年時はよいのですが、高学年になると、「落ちこぼれ」を作り出すことになるのです。
計算で速く解く必要があるのは、かけ算九九と2桁の数の繰り上がり・繰り下がり計算だけです。あとは、絵や線分・図を通して理解を深めながらじっくり解く習慣を身につけていくことが、高学年以降「落ちこぼれ」を作らない秘訣です。
小学校低学年のうちに、問題文を図で表したり、絵で考えたりしながら理解を深める学習が大切です。小学校4年生ぐらいになると、算数がより抽象化してくると、それまでに考える学習になじみのなかったお子さんほどつまづき出します。まして、小学校5年生にもなると、文章題(割合)や図形問題が増えてくると、お手上げとなってしまうお子さんもいます。
速く計算できればよいのは、かけ算九九と2けたの繰り上がり・繰り下がり計算だけです。