最近、家庭教師のトライが2ヶ月間無料(入塾を条件に)をテレビなどで広告し始めてから、続々と大手の個別指導塾などが無料を訴えて乱立状態だ。これが塾の使命として正しいのかというと否だ。もちろん、商業的にはありえることだ。これらの塾の経営者は、塾というものを商業活動として扱っている感覚がどうも馴染めない。未成年のこれから未来のある子供達をどうしたいのかが不明だ。安くして生徒を集めればいいということか。以前、埼玉に山田義塾から独立した「維新某塾」があったが、子供を1匹、2匹とカウントしていたのを覚えている。また、授業時間の4分の1の時間を使って、新しく生徒を勧誘した塾生を表彰したり、塾生に友達を自塾に勧誘するように洗脳するような行為をしていたことを思い出す。

 昨年度は、地元のK中学校で公立高校の不合格者が大量に出たそうだ。生徒の話では、在籍する中3生の4分の1〜3分の1程度が不合格であったそうだ。公立高校の実質入試倍率が1.2倍なので、5分の1が不合格者ならわかるが…。もちろん、私立高校を併願していたので、皆、高校へは進学できたのだが…。

 昔ならば、実績を欲しがる塾の無理な高望みの志望校選択を疑うのだが、今回は個別指導の限界をみる思いだ。授業料が高いので個別指導塾に通っている生徒は、通常は英語と数学しか取っていない。通常の授業では理科や社会は取らず、定期テスト対策として理科・社会の対策型の映像授業で間に合わせているところが多いようだ。

 ところが、大学入試制度改革により大学入試の共通テストが、より思考力・判断力・表現力を観る問題に変わるため、それに合わせるように、全国の公立高校の入試問題が難化してきた。かつては神奈川県の公立高校の入試問題の平均点は100点満点中で80点近かったが、最近は50点台だ。そのうち、理科・社会では40点台となることもある。

 単なる知識を問う問題が激減して、資料やデータから判断させる問題や条件がより複雑になった問題が多く出題されている。 その結果、英数国理社の5科目の合計得点で合否を決める公立高校の入試問題が解けない生徒が続出したのではないかと思われる。つまり、英語や数学は解けても、理科や社会が解けない生徒と言い直した方がいいのかもしれない。同じ志望校を受験する生徒間では、英語・数学は入試得点が似たり寄ったりの出来で、得点差があまりつかないのが現状だ。つまり、理科や社会の完成度が合否を分けていると言っても過言ではない。

 もちろん、高校入試直前の中3冬季講習からは個別指導塾に通う生徒たちも、高額な授業料(トライの場合は15万円以上)を支払って、いわゆる「対策授業」を受けているのだが、それでも間に合わなくなっているような気がする。教えるアルバイト講師たちも、普段は英語と数学しか指導していないのと、最近の高校入試問題の動向を知らないために、塾側からあてがわれた高校入試用教材で、解答・解説を指導前に読みながら授業(特に理科と社会)しているのが現状だから仕方がない。その差が実際の入試で現れているのだと思う。

 

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